それから間もなく聞こえてきた話が、MTの設定がなく脱落したはずのフォード・フィエスタにMTモデルが追加されるというもの。

しかも単なるMTではなく、スポーツモデルとして2リッターエンジンを載せ、本革シートをおごって登場するというのだ。そしてその開発に当たったのがフォードのチームRSだとも…。

マツダがもたもたしている間にここで一気に形勢逆転。欧州フォードはベーシックカーであろうときちんと仕事をしてくることは、以前試乗したノーマルフィエスタからも、我が家にあるKaからも明白である。そのフィエスタがさらにチューンされ、どれほどの実力を持つであろうかは、推し量るだけでわくわくする。きっと派手ではないが、確実な性能を引っさげてくるに決まっていて、しかもそれが5ナンバーで手に入るのだ。そうなると問題は価格だ。果たして予算内に収まるのであろうか。

年が明けて、フォードからの招待でフィエスタSTを見る事が出来た。ノーマルは全て5ドアだったが、STは3ドア。もちろんボディ剛性を考えての事だが、やはり後ろのドアは便利だし、5ドアのSTがあっても良いと思う。ただ、ここでは価格は未定のままで、入荷台数も未定だった。しかし、資料によってSTのチューニングメニューが明らかになった。配布されたSTブックによると

  • Ford Team RSが2年間にわたって開発テストを行った。
  • エンジンをデュラテック2リッターエンジンに換装。
  • スプリングレートやダンパーの減衰力も最適化。
  • フロントはキャンバーを強めてグリップ力を強化
  • ステアリングのギア比も機敏に変更。
  • サスの強化はもちろん、結合部の剛性もアップ、ジオメトリーの見直し。
  • ブレーキの強化(大径化、専用パッド、ブースター見直し)
  • ESPの搭載
  • 専用タイヤ(ピレリ P-ZERO nero)
  • 16インチアルミホイール
  • 専用スポーツシート

となっており、その効果は、のちにNAVIのダイナミックセーフティテストで清水氏に「コンパクトカーでフィエスタSTほどすばらしい危険回避能力を持ったクルマにははじめて出会った。さらにESPが付いているので、安全性ではホットハッチでは宇宙一!」と言われる。

1月末、雑誌AUTOCARでSTが掲載されていた。高性能にもいろいろあるが、STの性格は質実剛健、自分好みだ。別コーナーに掲載されていた「フィエスタRSの開発中止」のニュースも自分にとっては朗報だった。なぜならRSが出てしまうとSTというグレードが中途半端なものになってしまう。かと言ってRSは300万円オーバーと予想され、買えるはずもないし、実際そこまでとんがったものはいらない。

編集部がSTの価格と入荷台数を予想していた。現地価格が邦貨換算で240万円程度だから、250万円前後。台数は50台前後ではないかとのこと。50台ってなんだよ!とは思ったが、モンデオも確か20台限定。余程kaでのMT失敗が響いているらしい。さて、250万なら予算はギリギリ、もし270万円にもなろうものなら、値引きもあり得ないだろうし、確実にアウトだ。

2月中旬、ディーラーに問い合わせると、270万円くらいじゃないかとのこと…。うーん、厳しい。そこで諦めきれずフォードに聞いてみると、「価格はまだ未確定。でも4月に試乗会やりますよ」とのこと。問合せは既にボチボチあるらしい。
実はこの時点ではもう既にアクセラは心にあらず、フィエスタに賭けていた。これでもし乗り味が期待通りなら、きっと総合力でユーノス500の価値を上回れるだろうと。しかし、もしフィエスタSTが高過ぎたり、乗ってイマイチだったなら、逆に500をオールペンし、あと5年乗ろうと決めていた。5年後にはまたきっと違う候補があるだろうと。

4月、楽しみにしていた試乗会は、連絡の行き違いですでに終わってしまっていたが、5月に試乗出来る事に。そして入荷台数が決定。ノーマルのSTが50台と、17インチを履かせ、ラリー風デカールを施した「コンペティション」が20台の合計70台。価格は未定。

4月末、ディーラーに探りを入れてやっと価格が判明。ノーマルSTは240万円とのこと。素晴らしい。現地価格と同額はインポーターの努力の賜物だろう。あとは試乗をして余程気に入らないところがあったりしなければほぼフィエスタSTで決まり。色が選べないのはちょっとアレだが、「パフォーマンスブルー」も決して悪くないのでよかろう。最後の悩みは、STが好評で来年もまた確実に入ってくるのであれば、500を車検まで乗れるのだが…ということ。フォードに聞いてもその辺は否定せず、「恐らく入れられると思いますが」との事だったが、やはり不確定な事、500の状態も万全ではない事、駐車場が確保出来ている事から1年間ダブらせることにした。

そして5月中旬、試乗車をお借りして乗った途端に激しく感動。そのままその足でディーラーに向かい、「これください」。同時にユーノス500の引退が確定したが、苦悩の月日もここでついに幕を下ろした。