我が国で古代の東西両塔が揃って現存しているのは當麻寺だけです。

當麻寺 三重塔

しかも両方が国宝に指定、まったく贅沢な景色です。

この両塔は當麻寺の最初の記事に掲載したGoogleマップを見て頂けるとよくわかるんですが、 薬師寺のように整然と並んでいるわけではありません。金堂-講堂を結ぶ南北の軸線から、西塔の方がちょっと離れて建っており、しかも若干北寄りに位置しています。東塔の方はと言うと、航空画像を見る限り若干ですが南西を向いている感じ。山岳寺院の趣に加えて、東門からの眺めを意識したんでしょうか。

當麻寺 三重塔

そんな両塔ですが、その姿も似ているようで結構違っています。
東塔は寺の創建よりやや遅れた奈良時代末期の建立で、三重塔としては法起寺に次いで古いものです。ユニークなお寺の塔らしく、独自のスタイルが散見され、まず三重とともに二重まで方二間となっています。最上層が方二間になる例はあっても、二重までそうなる例は他にはなく、中備がないことも相まってスリムでシンプルな塔身に、ピンッと張った軒反りがとても仏塔らしいと言いますか、美しい塔だと思います。

當麻寺 三重塔

三重に関しては、鎌倉時代に大改修があったようで、組物の形状や、垂木の状態が異なるほか、屋根の勾配も多少緩やかだったのではないかと言われています。また、初重の連子窓は後世に追加されたものです。

「朝日百科 日本の国宝」によると、初重の1辺5.32メートルというのは天平尺の18尺にあたり、中央間と脇の間を4対3にしており、二重は初重の中の間7尺2寸を1間として2間とっている。三重は当初は初重の脇の間5尺4寸を1間として2間とったそうです。このあたりに美の秘訣でもあるんでしょうか。

當麻寺 三重塔

一方、西塔は平安初期の建立とされていますが、東塔から約100年も経っていることや、その位置から再建説もあるそうです。東塔に比べて0.8メートル高く、初重も多少細いんですが、三重まで方三間のため組物も多く、1辺の減じ方も少ないため、ちょいとセクシーさに欠けます。各部の構成要素もかなり整然としており、女性的な東塔に対して男性的ともとれることから、これはもしや二上山の雄岳と雌岳に呼応したんでしょうか…。

當麻寺 三重塔

當麻寺 三重塔

二重(下)の三手先は、初重(上)のそれよりも丸桁下の肘木が長いなど形式が違っていて、建設が一時中断するなど長い時期を要したことを表していますが、時代背景や経済的な事情などとともに、それでも両塔を揃えたかったという強い意志も見て取れます。

當麻寺、数々のユニークさゆえに、強烈なメッセージを放っているような気がするお寺です。

當麻寺 三重塔

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