等持院から次の目的地仁和寺までは、歩いて10分程度の至近距離。

仁和寺金堂

東門に着いたのが午前11時過ぎ。前日の天気予報では「11頃から曇りはじめ、雨は15時頃から」と言われていたので、等持院で降り出した雨も、たまたま気の早い雲が来ただけで、一旦あがってくれると嬉しかったんですが、そんな思いとは裏腹に徐々に雨量は増えてきます。とりあえず早めにとるはずだった昼食を後回しにして、伽藍を見ておこうと奥の金堂へと向かいます。

888年創建と古い歴史を持つ仁和寺ですが、ご多分に漏れず応仁の乱で大打撃を受け、堂宇のほとんどが江戸初期の再建です。それもあってか、ちょっとゆるい感じの伽藍ですが、いわゆる京都市街で3基(醍醐寺を入れれば4基)しかない五重塔があるうえ、久々の禅宗でないお寺がちょっと楽しみだったりします。

奥の突当りにある金堂は、元々京都御所の紫宸殿として使われていたのを移築したとても優美な建物です。京都御所は現在の位置に移ってからも、火災や建て直しで何度も繰り返し再建されているらしく、仁和寺のものがいつ頃使われていたものなのかを調べてみました。

1611年から造営された慶長内裏は、1591年に秀吉が造営した天正内裏を取り壊して作られたもので、この時の紫宸殿がのちの仁和寺金堂、清涼殿は古材が再利用されて御影堂となるもので、寛永内裏造営までの約30年間、本来の役目を務めていました。その後内裏は度々火災に見回れ、現在の安政内裏にいたるまで、実に6回もの造営を繰り返すことになりますから、仁和寺金堂は移築によって焼失から逃れられたラッキーな建物かも知れません。ちなみに仁和寺金堂の先代に当たる天正内裏の紫宸殿は、泉涌寺の海会堂となりましたが現存せず、清涼殿(あるいは女院御所の対面御殿との説もあり)は南禅寺の方丈となっています。

仁和寺金堂

移築に際して、屋根が桧皮葺から瓦葺になったこと以外はほぼ原形をとどめているそうですが、元桧皮葺らしい優美で軽やかな反りと、三軒で支えられた深い軒の出を備えた屋根がとても美しく、そのプロポーションや雰囲気から、現在の紫宸殿よりも好ましく感じるほどです。瓦屋根に変更する際に、この軒反りの曲線を維持するのに苦心したように思いますが、瓦によって増加した屋根重量は補強せずとも大丈夫だったんでしょうか?ちょっと調べた限りではそのようなことに言及した資料は見つかりませんでした。それにしても、四隅の柱に置かれた舟肘木のほか、組物のないスッキリした軒下には、元の屋根の方が似合っているように思われ、桧皮葺の姿も見てみたい気がする建物です。

さていよいよ雨も強くなって、写真を撮るのが厳しくなってきました。ほかのお堂の見学もそこそこにして、撮り残していた五重塔まで戻ります。この五重塔は江戸初期の1644年建立で、和様の形式をとり、細めの材と相まって繊細な印象を与えますが、これは金堂などに合わせたためでしょうか。江戸期建立の中ではきれいな方だと思いますが、短い相輪にずんぐり体型が繊細な木組みとアンマッチで少々惜しい塔です。

仁和寺五重塔

ところで、五重塔と言うとよく「逓減率」の話が出てきます。上層にいくにつれて軒の出や塔身が細く(小さく)なる割合のことで、塔のプロポーションやバランスに大きく影響するものです。ただ、それだけで塔の美しさを決めたり、最近建立のケースですが、まず理想とされる逓減率を割り出してから、それを元に設計したりするのはちょっとズレているような気がしてなりません。

古代の塔たちがどのようにして逓減率を決めたかは、各時代のトレンドや技術的背景もあると思いますし、古い方が低減率が大きいという一般的な傾向も大枠としてあるんですが、個人的な印象として、法隆寺や薬師寺のような平地の伽藍に建てる場合は逓減率を大きくとり、森に囲まれていたり、背景に大きな山があって、アウトラインがくっきり出ない、室生寺や瑠璃光寺、羽黒山のような環境では、低減率を小さくして、それぞれの背景に馴染むような設計をしているようにも感じます。なので塔を見る時には、塔単体だけではなく、環境を含めて眺めると良いかも知れません。

ただ、江戸時代のものはおしなべて低減率が小さくなっているので、この頃には発達した技術に走ってしまい、もはや美意識で建てる時代ではなくなってしまったのかも。まぁ、すべてがこの説に当てはまるわけではないんですが、塔の美しさには軒の深さや相輪の割合など、ほかにも重要な要素があるので、ことさらに逓減率だけを持ち出すのはどうかなと思います。

仁和寺仁王門

塔を見てる間にとうとう(笑)本降りに。知恩院三門、南禅寺三門とともに京都三大門のひとつとされる仁和寺二王門も中門から見ると雨で霞んできています。ここはもう観念して仁和寺敷地内にある「食事処 梵」で楽しみにしていた950円の湯葉丼を食べようと思ったら、ナント「本日は貸切により13時半より営業します」との張り紙が!仕方なく庭園のある御殿を先に見ることにしました。こちらは建物から庭を眺める分、いくらかマシなはずです。


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