今年の3月は、思い入れのあった2つの鉄道車両が去っていきました。

引退した2300系から、阪急電車の魅力を振り返る

ひとつはこれまでにも記事にしてきたブルートレインですが、もうひとつは現在まで引き継がれる阪急スタイルを確立した2300系です。

自分は小学校にあがるまで、おもに阪急今津線を利用していました。支線だっただけに使用される車両は唸り音の大きい810系や920系などの旧型電車で、形式はちょっと違いますが、下の画像のような車両でした。

引退した2300系から、阪急電車の魅力を振り返る

そのなかでたま〜にやってくる2000系電車は、すでにデビューから10年以上経っており、3000系や5000系が出ていたにもかかわらず、美しい車体が子供の目には新型電車と認識され「おニュー!おニュー!」と大喜び、絵もよく描いていました。今でもこの電車の画像を見ると、当時逆瀬川駅で電車を待っていた頃の空気感が蘇ってくるようです。

今回引退した2300系は、この2000系の京都線版でいわば兄弟車、2000系の単独編成が1992年に引退してしまったのに対し、震災やバブル崩壊の影響もあったんでしょう、今日まで55年もの間よく頑張ってくれました。

性能的なことや、マニアックなことはこちらこちらのサイトに譲るとして(好きな方は必読!)、この機会に自分なりに感じてきた阪急電車の魅力などをまとめてみようかと思います。

マルーンカラーの裾丸ボディ

引退した2300系から、阪急電車の魅力を振り返る

やはりまず第一に挙げられるのがボディカラー、ひとくちにマルーンといってもその色調は多少変化しているそうですが、これこそが阪急電車の阪急電車たるゆえんです。とくにその魅力が発揮されるのが夜で、ホームの狭い中津駅で艶艶のマルーンボディーに囲まれるのは悶絶ものです。

多くの鉄道会社がその歴史の中でボディカラーを変更していますが、「変えないこと」は「変えること」以上に難しいもの、大きな会社でありながらポリシーが守られ、受け継がれていることじたいがとても素晴らしい。

色だけで言えば、2000/2300系からマルーンになったわけではないんですが、これまでより飛躍的に品質感に溢れて見えるのは、塗装の質や仕上げもありますが、ボディの角が大きめのRでまとめられていることが大きいと思います。鉄道車両の材質と形状、そして色が相乗効果によって質感を生み出した好例と言えます。

3連窓と車番の位置

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そのマルーンボディをさらに際立たせているのが窓です。その後メジャーになったとはいえ、当時一段下降の1枚窓は阪急電車の代名詞といっていいほどのもので、これだけでサイドビューがグッとモダンでシンプルに感じたものです。

また、扉間にアルミの窓枠が施された正方形に近い窓が3つ並べられますが、この2つでも4つでもないところが重要。中央窓下に配置された車番も、他社によく見られる車体下部ではなく、窓下とボディ裾との間の中央に配することで、シンメトリによる格調高さまでが演出されています。

引退した2300系から、阪急電車の魅力を振り返る

以前は社章も車番と同様の位置に配置していましたが、1992年に新しいコーポレートマークが作られたことで、外されるようになってしまいました。
ただ、未だに車番を金属製の切り文字にしている阪急車両で、ステッカーによるマークは少し安っぽかったのでしょうか、最近車体更新が施された車両では、元の位置に戻りつつあるようです。

引退した2300系から、阪急電車の魅力を振り返る

下の画像は先代の特急専用車6300系、2扉のため車番とマークのグループを上下方向中央に配しています。この1代前の2扉特急車だった2800系では、社章が中央でその下に車番を置いたため、下寄りにな配置が阪急らしくないバランスとなってしまいましたが、この形式のみの例外だったようです。前の方が良かったとなると、迷わず元に戻すのも常に仕上がりを意識している阪急のいいところです。

引退した2300系から、阪急電車の魅力を振り返る

しかもこのマークの造形、間近で見ると相当凝っています。これぞ阪急電車といったところでしょうか。

引退した2300系から、阪急電車の魅力を振り返る

実はこの新しい(といっても20年以上経ちますが)マークはファンに不評なんだそうです。自分は宝塚歌劇というイメージリーダーを運営しつつ、都市開発も担う阪急グループがうまく表現され、かつ似たものが思い浮かばず、阪急にしかつけられない秀逸なデザインだと思いますが、電車単体で見るからでしょうか、1975年に製造された2200系以降に付けられていたJNRマーク風のHマークの方が人気のようです。

引退した2300系から、阪急電車の魅力を振り返る

心配なのは、ここで挙げた魅力が最新車両で見られなくなってきていることです。今では車両製造メーカーの基本コンポーネントを利用するようになったため、仕方ない…と言いますか、その割にはよくやっていると言えるのかもしれませんが、ボディ裾のRは小さくなり、窓は大きくなって3つ並んだ姿は見られなくなりました。

窓などの開口部が大きいと、ポップで軽快なイメージと結びつきやすく、それが好まれる車両もあるとは思いますが、格調高さを色濃く残す阪急車両では、方向性が違うように感じます。どちらがいい悪いでは決してありませんが、40年程度は使用する鉄道車両ですから、流行を追うよりも普遍性の高いデザインを採用する方が理にかなっているかもしれません。そしてこれは車内デザインでも言えることです。

木目パネルとゴールデンオリーブのシート

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木目とオリーブグリーンの組み合わせというのはある意味オーソドックスで、独自性と言えるものではないのかもしれませんが、最近見られるような、注意喚起部分に強調色を取り入れた機能重視車内とも、いかにもインテリアデザイナーが介在したようなものとも違う、長年にわたって磨かれてきたことで、落ち着きや安心感がありながら、古さを感じさせない空間が魅力です。

引退した2300系から、阪急電車の魅力を振り返る

木目調の室内パネルは、その色調から、外から見ると車内に白熱灯を使っているような落ち着きとあたたかみを感じます。ちょうど、オフィスビルと高層ホテルの夜景の違いのような感じでしょうか。

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もちろん見た目だけでなく、質の良いシート生地や、奥行きのあるシートも大事な美点。こちらも日立製になった頃に変わってしまいそうになりましたが、最新型では踏襲されているようでした。(まだ乗ってませんけど)

メーカー謹製の共通シャーシを使うという天変地異はあったものの、とくに車内に関しては、同形式内であっても少しずつ着実に改良が重ねられてきた大切な財産として、今後も継続していってほしいものです。

引退した2300系から、阪急電車の魅力を振り返る

正雀車庫には2300系のトップナンバーを含む編成が長らく留置されていますが、これだけの功績ある車両、きっと保存されることと思います。現在、単独の博物館を持たない阪急ですが、いっそのこと京都にできるJR西日本の鉄道博物館にブチ込んで、いつでも当時の姿を見られるようになってくれると楽しいんですけども。

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